親が住んでいた実家を相続する。
長年暮らしてきた家には、家族の思い出が残っています。簡単に売却する気持ちになれない人も多いでしょう。
一方で、自分には住む予定がなく、遠方に住んでいるため管理も難しい。
それでも「いつか使うかもしれない」と考え、判断を先送りしてしまう。
今回の記事では、相続した実家や土地を、単に残すか手放すかという二択ではなく、家族の資産としてどう向き合うかを考えます。
建築・住宅・不動産の現場に30年以上関わってきた森ヒロの視点から、空き家・空き地に潜む問題と、これから考えておきたい7つの選択肢を紹介します。
【幻想|実家を残すことが家族の安心につながると思っていませんか?】
親が住んでいた実家を相続すると、家族の資産を受け継いだという気持ちになります。
土地も建物も残っている。売却すれば現金になるかもしれない。将来、子どもや親族が使う可能性もある。
そう考えると、急いで手放す必要はないように感じます。
ところが、住む人がいない家は、時間が経つにつれて少しずつ状態が変わっていきます。
庭木が伸び、室内の湿気がこもり、屋根や外壁の傷みも進んでいきます。
誰も住んでいないからといって、建物の維持費がなくなるわけではありません。
実家を残すことが、必ずしも家族の安心につながるとは限らない。
ここに、相続不動産を考えるときの最初の違和感があります。
【違和感|大切な実家なのに、誰も管理できていない】
建築業界で30年以上、戸建住宅の営業や設計、アパート設計、積算、現場事務などに関わってきました。
住宅は、建てたときが完成ではありません。
住み続けるためには、点検や修繕、日常的な管理が必要になります。
これは、相続した実家でも変わりません。
現場で住宅に関わってきた視点から見ると、気になるのは建物の古さだけではありません。
使う人が決まっていない。管理する人も決まっていない。維持費を誰が負担するのかも曖昧になっている。
それでも、家族の中では「大切な家だから残しておこう」という話になっている。
残すという判断はあるのに、残すための仕組みがない。
この状態が続けば、実家を守るつもりが、特定の家族に管理や費用の負担を集中させてしまうことがあります。
【誤解|相続した実家は、とりあえず持っていればよいのか】
相続した家や土地は、名義を引き継げば安心というものではありません。
誰が所有するのか。
誰が管理するのか。
将来、売却するのか、貸すのか、住むのか。
こうした判断を先送りにすると、家族の意見がまとまらないまま時間だけが過ぎることがあります。
特に気をつけたいのが、相続登記です。
相続によって不動産を取得したことを知った日から原則3年以内に、相続登記を申請する義務があります。
2024年4月1日より前に発生した相続で、未登記のものにも経過措置があります。
家族の話し合いが済んでいないからといって、登記の問題まで放置できるわけではありません。
また、売却することが親の思いを裏切るように感じる人もいるでしょう。
しかし、誰も使わず、誰も管理できない状態を長く続けることが、親の望んだ形なのかは別の問題です。
相続した実家を持ち続けることと、家族の資産を守ることは、必ずしも同じではありません。
【構造|空き家・空き地の問題は、建物だけでは解決しない】
相続した実家の問題は、建物が古いから発生するわけではありません。
本当の原因は、相続前後に家族で決めておくべきことが、決まっていない点にあります。
誰が住むのか。
誰が管理するのか。
年間いくらの費用がかかるのか。
いつまで保有するのか。
この四つが曖昧なままでは、建物の状態を確認する機会も、売却や賃貸を検討する機会も失われていきます。
空き家は、時間が経てば自動的に価値が生まれる資産ではありません。
固定資産税、火災保険、庭木の手入れ、建物の修繕など、保有しているだけでもコストが発生します。
管理が不十分になれば、近隣への影響や建物の安全性にも関わってきます。
また、自治体から管理不全空家等として指導や勧告を受け、一定の要件に該当すると、住宅用地の固定資産税の特例が解除される場合もあります。
相続した家を放置することには、こうした経済的な問題も隠れています。
問題の表面にあるのは空き家ですが、その裏側にあるのは判断の先送りと家族間の役割不足です。
不動産の価値を考えるとき、売却価格や土地の広さだけを見るのでは不十分です。
維持費、管理時間、修繕費、将来の売却可能性まで含めて考える必要があります。
これは、家計のB/Sにもつながる話です。
不動産を資産として計上していても、維持費が毎年発生し、収入を生まない状態なら、家計のキャッシュフローを圧迫する可能性があります。
資産の評価額と、実際に家計に残るお金は別のものです。
【盲点|相続した後に発生する見えない負担と決める責任】
相続不動産で見落とされやすいのは、建物や土地そのものではありません。
誰が、いつまで、いくら負担して、どのように管理するのかという問題です。
遠方に住む相続人が、毎月実家へ通うことは簡単ではありません。
管理会社に任せれば費用が発生します。売却するにも、境界や建物の状態、権利関係などを確認する必要があります。
貸す場合には、改修費や入居者募集、管理費用も考えなければなりません。
さらに、相続人が複数いると、家族それぞれの考え方も違います。
残したい人もいれば、売却して現金で分けたい人もいます。
こうした違いを話し合わないまま時間が経つと、管理の責任だけが特定の人に残ることがあります。
家族の資産を守るつもりが、家族の負担を増やしてしまう。
これが相続不動産の見えにくい盲点です。
人は短期的な裏技を求めます。
しかし、不動産相続には、簡単に解決できる裏技はありません。
所有者、家族の意向、建物の状態、維持費、地域の需要。
これらを見える化して初めて、判断の方向が見えてきます。
【設計|相続不動産を7つの選択肢で考える】
森ヒロなら、相続した実家や土地を、残すべき資産か手放すべき負担かという二択では考えません。
家族の暮らしに役立つ形へ組み替えられるかという視点で見ます。
選択肢は七つあります。
1. 使う
家族が住む、二世帯住宅として活用するなど、実際の暮らしに役立てる方法です。
2. 貸す
建物の状態や地域の賃貸需要を確認し、賃貸住宅として収入を得る方法です。
3. 売る
維持管理が難しい場合に、売却して現金化する方法です。
4. 壊す
老朽化した建物を解体し、土地として活用する方法です。ただし、解体費用や解体後の税負担も確認が必要です。
5. 任せる
管理会社などに依頼し、遠方からでも適切な管理を続ける方法です。
6. 手放す
売却や、要件を満たす場合の相続土地国庫帰属制度などを検討する方法です。国庫帰属制度は、審査や負担金などの条件があり、すべての土地を引き取ってもらえるわけではありません。
7. 話し合う
相続人の意向や費用負担、将来の方針を整理し、家族で合意をつくる方法です。
この七つは、どれか一つだけを選ぶものではありません。
管理を続けながら売却を検討することもあります。
家族で話し合った結果、賃貸ではなく売却を選ぶこともあります。
不動産の状態や地域の需要によって、判断は変わります。
建築費や修繕費が増加する時代には、収益だけを見た不動産活用も危うくなります。
家賃収入があっても、管理費や修繕費、税負担を差し引くと、手元に残る金額が少なくなることがあるからです。
Web事業でも、アクセス数だけではなく、流入から導線、成約までを確認します。CVRやデータ分析によって改善する考え方です。
不動産も同じで、表面上の売上や家賃収入だけで判断せず、実際の手残りと管理負担を確認する必要があります。
不動産活用の目的は、収入を増やすことだけではありません。家族の負担を減らし、資産を家計に役立つ形へ変えることです。
管理を自動化したり、専門会社に委託したりする方法もあります。
ただし、任せれば責任がなくなるわけではありません。所有者として管理状況を確認する仕組みが必要です。
NISAや年金と同じように、不動産も長期的な家計設計の一部として考える視点が求められます。
【行動|相続した実家について、自分で確認できること】
実家を相続したら、誰が使うのか、誰が管理するのか、年間いくらかかるのか、いつまでに方向性を決めるのか。
この四つが見えてくると、家族で話し合う土台ができます。
相続した実家は、名義を引き継いだときが終わりではありません。家族の将来に合わせて、次の形を決めるところから始まります。
森ヒロのメンバーシップでは、こうした不動産と家計の問題を、資産・負債・収入・支出の視点から継続的に考える環境を用意しています。
森ヒロのメンバーシップ|自分の家計を継続的に管理する場所
月額1,980円
60代の資産崩壊を防ぐ『家計法人化』戦略とBS設計
メンバーシップでは、知識を読むだけで終わらせず、自分の家計を継続的に管理するための実践資料を用意しています。
メンバー特典
① 60代専用BS設計シート_マニュアルVol1
② バランスシート_統合と可視化_無料レポートVol1
③ メンバー特典マガジン
④ 60代の年金・NISA「老後収入設計5点セット」
実家を残すことが正解なのか。売却することが家族にとってよい判断なのか。
家計全体の資産と負債、将来の収入と支出を整理しながら考えるための継続的な管理の場です。
注意事項
※本記事は税務・不動産に関する一般的な情報提供を目的としています。個別の税務処理については税理士にご相談ください。
※資産運用にはリスクが伴います。最終的な投資判断や法人設立等の意思決定は、ご自身の責任において行い、必要に応じて税理士、弁護士等の専門家にご相談ください。
※個別の不動産取引については、不動産会社または宅地建物取引士にご相談のうえ、ご自身の責任で判断してください。
※相続登記には法律上の申請期限があります。個別の相続関係や登記手続については、司法書士または法務局にご確認ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の不動産活用による収益や資産価値を保証するものではありません。
※本記事内のコンテンツは著作権により保護されています。無断転載・無断使用はご遠慮ください。
https://real-estate.serverstyle.biz/real-estate-income-plan/
https://real-estate.serverstyle.biz/mortgage-retirement-repayment-plan/



コメント